公園の中に住む。
飲食店を経営するクライアントさんは、休日は家から出ない日も多く、家でのんびり過ごしたいとの要望であった。そんな話から、家から出ることなくのんびりできる住宅を提案しようと考えた。
建設予定地は栃木県の郊外にあり、敷地に沿った道を北に150m程度行くと緑豊かな山が始まり、南側のエリアは近年区画整理により整備されていた。初めて敷地をみたときに、古い景色と新しい景色のちょうど狭間に位置する敷地であることが印象的だった。敷地の高低差を測ると、南側から北側にかけて約１m高くなっていることもわかった。この環境にあって、周辺環境との調和を考えたときに、山と一続きとなるような、街の公園のようなそんな外観が自然であるように思え、残土が多く出ることを利用し、外周に沿って土手を設け、築山をつくり樹木を植え込んでいく計画とした。また、樹木からの木漏れ日をそのまますべての室内に届けるために、屋根と内側に向いた外壁をすべてガラスとし、日射熱を軽減するためにハーフミラーのような熱線反射フィルムを貼る計画とした。鏡のような特徴を利用し、建物をロの字型に設け各スペースのプライバシーを確保した。ロの字に囲まれた中庭に面するテラス窓はすべて開放できるようにし、大きな広場のような使い方もできるようにしている。
空調に於いても、外周に沿って設けた土手により、夏に冷たく冬に暖かい安定した地中の温度を利用しながら、土壌蓄熱暖房とエアコンで１年を通して快適に暮らせるように考えている。
古い景色と、新しい景色のちょうど中間に位置するしつらえを考えたときに、のんびりとした公園のような建築が自然と導かれていった。